先週末、母の付添で帰省、病院に2泊した。 その間、ほんの3時間ほど実家へ顔を出す。
父とお茶を飲みながら軽い会話を交わしていると、いつの間にか昔・・・父が大学へ入学したころ、そして獣医として陸軍に入隊したころ・・・の話になった。
「入学した時着物を着ていたのは自分だけ・・・・ああ、うちは貧乏なんだなあと思ったもんだ。ところが仕送りが始まると、月30円で暮らせるところに毎月100円送ってきて驚いたよ」
要するに親の側の情報不足ね、と言えないこともない。 それよりも、私の脳裏に浮かんだのは、今は80歳を超えた父の初々しかった青年の姿。 どのような学生生活を送っていたのだろう・・・・
話は陸軍入隊時買ってもらった刀のことに移った。 父は突然立ち上がり二階へ行ったと思ったら、その古い刀を持って降りてきた。
「これは結構いい刀らしいんだ。ほら鑑定書もついてるぞ」
恐る恐る抜いてみた。 ずしりと重い。 鞘は古びているが中の刀はまだピカピカ。 こんなの初めて見たよ。
父との会話・・・・最近のこと、これからのことを話しても盛り上がらないのだが、やはり昔の話は話す方も聞く方も楽しい。 もっともっと聞いておきたいと思った。
病院に戻り母のそばに座る。 最近は長い会話も難しくなってきていて、視線もぼんやり宙を見つめている。
それでも、母と話したい・・・
ふと、父のように昔のことだったら少し話せるかな?と思い、母に聞いてみた。
「ねえ、今まで旅行した場所で、一番楽しかった所ってどこ?」
「ハワイ」とすぐに返事が返ってきた。 意外・・・・てっきり日本の地名が出てくるものと思っていた。
「どうして?」
「みんなにこにこと幸せそうな顔をしていたもの。」
「そうね、ハワイは暖かいものね。楽園だよね。」
母とのやり取りは短かったけれど、聞いておいてよかったと思った。
両親の思い出話は今迄何度も聞いてきたはずなのに・・・・
今回はやけに心に沁みる。